あしあと、あしあと。

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 ***  五つの部屋とこの丸い広間は、自由に行き来できるようになっているようだった。とはいえ、アナウンスが言った通り、この広間に出口らしきものはない。台座も念入りに調べたが、どこかに隠し扉があるというオチはないようだった。一体自分達はどこから運び込まれたというのだろうか。ざっと見た感じではあるが、それぞれの部屋も皆作りは同じで、どこか特別なドアがある様子でもない。  平等を化すためなのか、それぞれの部屋には全て同じだけの武器が保管されていた。鉈、ナイフ、チェンソー、毒薬、毒ガス、包丁、草刈鎌などなど。他にもガソリンのようにどう考えても危なすぎて使えないようなものや、絵の具にボールペンにノートにイヤホンといった何に使うのかわからないものまでごっちゃりと押し込まれているらしい。まるで、それらを使って殺し合いをしろとでも言いたい雰囲気である。 「実際、殺し合いさせるのも目的なのかもしれないな」  渋い顔でメガネを押し上げながら、駆が告げた。 「誘拐犯の言うとおりにしていれば、上位二名が本当に解放されるのかどうか?ひとまず、その疑問は置いておくことにしよう。問題はこのルールだな。足跡を小さくするためには、足を小さくするしかない。自分の足を切って小さくして足跡を付けるでもしない限り、俺達男性陣はまず生き残れないだろうな」 「い、嫌だってそんなの!すげぇ痛いに決まってるし、歩けなくなるだろ!」 「同感だ。俺だってやりたくないし、仮にその方法で生き残った場合は朝香と璃菜を犠牲にするってことでもあるしな」  健之助の言葉に、眉一つ動かさない駆。高校時代から誰より冷静で自分達のブレーン的立場だった彼。こういう状況でもそれが変わらないのは頼りになると思う反面、落ち着きすぎていて不気味だとさえ思ってしまう。まるで、この状況を恐れていないかのよう。  よくある話だ。被害者メンバーの中に、実は誘拐犯の仲間が紛れている、なんてことは。駆に限ってそんなことなどあるはずもないとは思うのだけども。 「もう一つの方法は。他のメンバーの足を自分より大きくしてしまう、もしくは……足跡をつけられないようにしてしまうことだろう」  どういうことかわかるか?と駆の眼が眼鏡の奥で光った。 「自分より足の小さいメンバーを襲って、足の裏を切り開いて大きくしてしまうとか。あるいは……そもそも殺してしまって、タイムリミットが来た時に足跡をつけられないようにする、ということだ。恐らく、誘拐犯はそれを狙っている。俺達が殺し合いなんかをしたら、敵の思うつぼということだ。こんなくだらないゲームを考案した奴の思い通りになりたくなかったら、全員冷静な判断をすることだな」 「か、駆……」
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