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翌日、新伍と一緒に学校へ向かっていた。 朝から気が重いのは昨夜のことのせいだ。 それが新伍に伝わってしまったのか、気遣うように聞いてきた。
「昨日、グループで集まって作戦会議をしたんだろ?」
水曜日に集まりがあるということは新伍に話してある。 新伍もグループで作戦会議のようなものがあるようで、特に自分たちが特別に行っていたわけではないようだ。
「あぁ。 でも最悪な結果で終わったけどな」
昨日の出来事を全て話す。
「恵意さんがそんな嘘を!?」
「嘘だよな!? 俺、嘘ばかりついていないよな?」
「うん。 学校で嫌われ者でもない」
「だよなぁ。 でも母さんからも信用を失ったから、もうどうしようもないんだよ」
「家族からも信用を失うのは確かに辛いな・・・」
新伍が否定してくれて少しホッとしていた自分がいた。 自分が嫌われているということに、ただ気付いていないだけだったということではなかったのだ。
その後は気分転換に他愛もないことを話し、気付けば学校へ到着していた。 教室へ入るや否や、恵意がニコニコとしながら近寄ってくる。
「・・・何だよ」
「アンタ、お母さんたちから嘘つきだと思われているわね?」
「それは恵意が嘘をついたせいだろ!?」
恵意の言葉を聞き、我慢していた感情が破裂しかけてしまう。 思わず掴みかかってしまいそうになったところで、新伍が割って入るよう制止した。
「近哉!」
近哉の大声によりクラスメイトは静まり返ってしまっている。
―――確かにここでクラスから浮くようになったら、嘘が本当になっちまうからな・・・。
改めてそう思うと止めてくれた新伍に感謝をした。 その様子を面白そうに眺めていた恵意が言う。
「素行って重要よね」
「俺だって普段、真面目にしているから」
「それは知っているわよ。 だけど私の方が品行方正だと思われているっていうこと」
恵意の態度は近哉にだけ。 二人の間に何かがあると思っているクラスメイトは多いだろうが、あまり触れられない。 だが恵意は陰では近哉のことを悪く言っている可能性はあった。
―――新伍に証言してもらって、誤解を解いてもらうのも手だけど。
―――流石に新伍まで巻き込みたくはないんだよな・・・。
「・・・どうしてこんな嫌がらせを俺にするんだよ」
「・・・」
「答えろって。 言えない何かがあるのか?」
恵意はそっぽを向いて言った。
「気に入らないからよ」
「はぁ!?」
「近哉のことを見ているだけで気に入らない。 理由は分からないけどイライラするの!」
「何だよそれ!」
「早く視界から消えてほしい。 いなくなってほしい。 それが理由」
「理不尽過ぎるだろ! 理由が分からないのに嫌がらせをするって」
隣にいる新伍も呆れていた。
「・・・分かった。 もう二度と恵意とは口を利かないし目も合わせない」
「待って!」
恵意の横を通り過ぎようとすると手首を掴まれた。 自分から消えてやろうと思っていたところで、本当に意味が分からなかった。
「何だよ」
「ハイキングレースは協力しないと無理だから」
「今の俺たちの状態で協力なんてできるわけがないだろ」
「お母さんが楽しみにしているの! 私たちの関係に、お母さんたちまでを巻き込みたくない」
自分勝手だと思った。 だが信用は失ってはいるが、恵意の言い分も頭から否定することはできない。 そうでなくても内申点に影響するならこのイベントは避けては通れない道なのだ。
「・・・じゃあ、どうしたらいいんだよ」
「今まで通りにしていればいいのよ」
「それだと恵意は俺に嫌がらせをするじゃないか」
「それは我慢して。 私も極力感情的にならないよう気を付けるから」
「・・・」
恵意はそう言うと離れていった。 新伍が心配そうに言う。
「・・・近哉、大丈夫か?」
「あぁ・・・」
近哉は小さな返事と、大きな溜め息しか出なかった。
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