まずはキスからはじめよう

１ 莉子

すると何やら、部長の席の周りに人が集まっている。

「…どうしたんですか？」

声を掛けると、返事をしたのは人事部の社員だった。

「今年、新卒採用が不発だったろ？だから中途で何人か入れたんだけど、来週の月曜から入る奴の資料持ってきたら…何か盛り上がっちゃって」

あー、そう言えば榊原課長がそんなこと言ってたな。どうせ私は教育係でも何でもないし、配属先は第二課だから関係ない。

そんなことより、阿形に内線しなきゃ。

そう思って自席に着くと、同僚達が次々に声を掛けてきた。

「冴島、見なよ。めちゃくちゃイケメンなの、この子！」
「しかも帰国子女だって。何でウチに来たんだろうね？」

すると男性社員が割って入る。

「か〜！これだから女は！顔も帰国子女も関係ねえよ、実力主義なの！ベンチャーは！」
「負け惜しみ？そんなこと言うなら契約の１つでも取って来なさいよ、アンタ今月売り上げ何位だっけ？」
「うるせー、うるせー！」

…全く、興味が湧かない。

ギャーギャー盛り上がる皆を他所に、同期の阿形に内線を飛ばした。