1 莉子

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その夜。 阿形との打ち合わせが終わったのは、21時半を回ったところだった。社員達は、もう殆どが帰宅している時間。 「ごめんな、長くなっちゃって」 「良いの良いの、気にしないで。いつも案件振ってもらって、感謝してるから」 駅までの道を2人で歩く。 「…メシでも奢ろうか?」 気を遣っている、阿形の声。 「なに、気持ち悪い。別に良いよ。家で千恵美が待ってんでしょ?」 「…一応、」 千恵美と阿形は、同期の中でも公認のカップル。同棲してるのかしてないのかよく分からないけど、毎日一緒に居るのは確からしい。 「じゃあ良いよ、早く帰ってやんなよ」 「…悪いな、また今度」 阿形は片手を挙げて、駅の階段を駆け上がった。 「……ハァ、」 思わず出た、ため息。 ーーー何やってんだろ、私。 みんな仕事頑張って、プライベートは幸せで、人生充実してます!って感じなのに。 私はーーー仕事はまあまあ順調だけどーーー未来のない恋愛をズルズル続けている。
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