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その夜。
阿形との打ち合わせが終わったのは、21時半を回ったところだった。社員達は、もう殆どが帰宅している時間。
「ごめんな、長くなっちゃって」
「良いの良いの、気にしないで。いつも案件振ってもらって、感謝してるから」
駅までの道を2人で歩く。
「…メシでも奢ろうか?」
気を遣っている、阿形の声。
「なに、気持ち悪い。別に良いよ。家で千恵美が待ってんでしょ?」
「…一応、」
千恵美と阿形は、同期の中でも公認のカップル。同棲してるのかしてないのかよく分からないけど、毎日一緒に居るのは確からしい。
「じゃあ良いよ、早く帰ってやんなよ」
「…悪いな、また今度」
阿形は片手を挙げて、駅の階段を駆け上がった。
「……ハァ、」
思わず出た、ため息。
ーーー何やってんだろ、私。
みんな仕事頑張って、プライベートは幸せで、人生充実してます!って感じなのに。
私はーーー仕事はまあまあ順調だけどーーー未来のない恋愛をズルズル続けている。
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