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プロローグもどき (読了約1分)
どこまでも白く染められ、壮大に連なる山々。
その中に、まるで絵の具で乱暴に塗りつぶしたように白さ際立つ所が見える。
そこは、山里離れ、ひっそり佇む、とあるスキー場のゲレンデだ。
その純白の上に皆、様々なシュプールを描く。
その裾野の隅のリフト乗り場にフォーカスしてみる。
人々が列をなす先に、ハデなピンクの人影が動いている。
あ~。混んできた~。だり~。
今日もまた一段と寒み~し。
雪、もさもさ降ってきたし。
リフト係の元輝はバンバンッと、リフトの背もたれに付着した雪をホウキで叩き、慣れた手つきで器用に座部から払い落としてゆく。
ぷらぷらエンジョイ☆ニートライフを送っていた彼は、住み込みタダ飯、タダスノボに釣られてこの辺鄙な山奥のスキー場に流れ着いた。
何をやっても長続きせず、『一生懸命』とは無縁の男だが、意外と真面目に仕事をこなしている。要領もいい。
リフト係のウエアではなく、自分のハデなヤツを羽織っている。深く被ったニット帽の下からはアッシュの髪が覗いている。
瞳は意外とつぶら。
マジ、厳ぃ~。交代まであと何分だ?
早く代われ、代わ……。
あっ、妖精ちゃんが来た!
いや、いい、いい。交代しなくていい!
淡い水色のスキーウエアのあの娘が板を担ぎこちらへ登ってくるのが見えた。
「吉田さん、まだ、まだっ!俺もうちょいイケるッス!もう少し休んでて下さい!」
だるさなんてすっかり忘れ去った。
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