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真白@リフト7/10 (約1分半)
白いゲレンデに澄みわたる青い空とのコントラスト。
ときめきに溢れる光景。
な~んて、実際そんな甘いもんじゃない。
豪雪地にあるんだもの。それはそれは寒くって、ずーっと雪がやまなかったり、空なんて大抵暗~いグレー。
今日は特に寒い!
霧氷で包まれた木々も可哀想。
うん。でもこの景色、大好き。
昨日まで降り積もった雪も、これなら一日中絶好のコンディションを保ってくれるはず。
小さな頃から家族で来ているスキー場に、まさか自分の運転で、ましてや一人で通うようになるなんて思いもしなかったな。
真白は澄んだ空気をたっぷり吸い込んだ。
パステルの水色のウエアは彼女のお気に入りだ。
今日は思ったより、人、多いな。
友達はみんなスノボだけど、私は断然スキー。
だって小さな頃から滑ってるし、私は硬派なんだから。
な~んて。ここのスキーインストラクターの柊さんに憧れているからってホントは動機が単純で不純。
子供の頃、転んで動けなくなった所を助けてくれたのが彼。
イントラの中でも断然上手くてカッコイイ!
今日は見つけられるかな。
などとぼんやりしていると、もうペアリフトの乗り場は目の前。係のお兄さんのピンクマンに声を掛けられた。
「相席にご協力下さーい。」
ん?今日は声のトーンが低め?
隣に座れるスペースを開けようと少しずれると、すらりとした赤いウエアが滑り込んできた。
あ、スクールのウエア!
隣に乗り込んできたのは……柊さん!?
ええっ。
ちょ、ちょっと待って。
心の準備が。
どうしよう。
焦る、焦る。
心臓ばくばく。
もう、スキーウエアも突き破っちゃいそう。
話しかけなきゃ。
けど、なんて?
軽いパニックになりながら、結局ずっと声をかけられないまま、無情にもリフトは進む。
リフトの柱に書かれた数字は7/10。
後3本分しか隣にいられない。
ちらと盗み見る。
その横顔は思っていたより少し童顔に見えた。
思ったより年、近いかも。
火照った顔を隠すようにうつむくと、眼下にウサギの足跡が点々と続いているのが見えた。
不意に顔を上げ、恐る恐る声をかけた。
「ウサギ……実際に見た事ありますか?」
咄嗟にでた言葉がこれ?……
「ウサギは臆病だがら、誰もいない暗い夜しか出ないから、見た事ないなぁ」
柊さんってちょっと訛ってるんだ。それもまたギャップでかわいい!
そんな些細な事が知れて嬉しくなる。
「ずーっとご家族で来てましたよね。もうすぐ足も揃いそう。上手ぐなりましたね」
私のこと、知っててくれてた!
助けてくれたのも、覚えてくれているかな?
よしっ。がんばろ。
ぜっっったい、上手くなる!
柊さんのクラスにはなれないだろうけど、午後からスキーのレッスン……受けてみようかな。
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