ゆう@パパとリフト    (約1分)

1/1

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

ゆう@パパとリフト    (約1分)

 真白(ましろ)(ひいらぎ)の次のリフトは、このスキー場のパトロール隊員の加藤と5才の息子、ゆうを乗せて進む。  加藤はオフの日で、今夜は特別に寄宿舎にゆうも泊まらせてもらうことになっている。  ゆうはスキーもリフトも初めてだ。  はしゃいでいる。 「はやい、はやーい!あっ、パパ、あのてんてん、なあに?」 「あぁ、あれはカモシカの足あとだな。おっきいシカ。パパ、見たことあるんだぞ。後で図鑑で見てみよう。  じゃあ、これは何の足あとだと思う?」  大きな瞳を輝かせ父親が指さす先を見下ろした後、顔をしかめて考え込んだ。 「ええー。ヘンなかたち。うーん。わかんない。たぬきかなあ。キツネ?」 「これはね、うさぎの足あとなんだよ。前足を、こんな風についた後に、ピョーンと跳ねて後ろ足を前にこうつけるから、こんな跡になるんだよ。危ないからゆうは真似してダメだぞ」  そう言うと、加藤が手を前足に見立てて前後に突きだし、その後、足を広げておどけて見せた。 「わあ。すごい!ウサギもくるんだ」  ゆうは、興味津々で辺りを見回し、足あとを探し始めた。 「あっ、これは?おっきい。何かな」  足あとは、リフト真下まで続き、Uターンして戻っている。  加藤はニマッと笑って答えた。 「それはストックを落として、拾いに行った人の足あとだよ。ほら、長ーい跡もついてる」 「なんだあ」  二人は大笑いした。  ゆうは、スキーもリフトも大好きになった。  その夜、外に灯りが動いて見えた。  ゆうは「なんだろう?」と思い、窓に近づいていって、手で目の回りを覆って外を覗いた。 「おー。すっごい!おおきなトラックのあしあと!」 加藤が微笑みながら答えた。 「あれは、圧雪車。ゲレンデをきれいに平らにしているんだよ。明日の朝、早起きしたら、だーれも滑っていない、圧雪車のギザギザの上を滑れるよ。よし。早く寝て、明日は早起きしよう」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加