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ゆう@パパとリフト (約1分)
真白と柊の次のリフトは、このスキー場のパトロール隊員の加藤と5才の息子、ゆうを乗せて進む。
加藤はオフの日で、今夜は特別に寄宿舎にゆうも泊まらせてもらうことになっている。
ゆうはスキーもリフトも初めてだ。
はしゃいでいる。
「はやい、はやーい!あっ、パパ、あのてんてん、なあに?」
「あぁ、あれはカモシカの足あとだな。おっきいシカ。パパ、見たことあるんだぞ。後で図鑑で見てみよう。
じゃあ、これは何の足あとだと思う?」
大きな瞳を輝かせ父親が指さす先を見下ろした後、顔をしかめて考え込んだ。
「ええー。ヘンなかたち。うーん。わかんない。たぬきかなあ。キツネ?」
「これはね、うさぎの足あとなんだよ。前足を、こんな風についた後に、ピョーンと跳ねて後ろ足を前にこうつけるから、こんな跡になるんだよ。危ないからゆうは真似してダメだぞ」
そう言うと、加藤が手を前足に見立てて前後に突きだし、その後、足を広げておどけて見せた。
「わあ。すごい!ウサギもくるんだ」
ゆうは、興味津々で辺りを見回し、足あとを探し始めた。
「あっ、これは?おっきい。何かな」
足あとは、リフト真下まで続き、Uターンして戻っている。
加藤はニマッと笑って答えた。
「それはストックを落として、拾いに行った人の足あとだよ。ほら、長ーい跡もついてる」
「なんだあ」
二人は大笑いした。
ゆうは、スキーもリフトも大好きになった。
その夜、外に灯りが動いて見えた。
ゆうは「なんだろう?」と思い、窓に近づいていって、手で目の回りを覆って外を覗いた。
「おー。すっごい!おおきなトラックのあしあと!」
加藤が微笑みながら答えた。
「あれは、圧雪車。ゲレンデをきれいに平らにしているんだよ。明日の朝、早起きしたら、だーれも滑っていない、圧雪車のギザギザの上を滑れるよ。よし。早く寝て、明日は早起きしよう」
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