1人が本棚に入れています
本棚に追加
12月
街中はイルミネーションで飾りつけられ、華やかに賑わう。
湿った空気がより一層冷え込み、雪をちらつかせたのはクリスマス。
クラスのみんなでクリスマスパーティーをしよう! と企画したのは裕也だった。
クラス仲は男女問わず悪くない。出欠を取れば、予定のない半数ほどの人数が集まった。俺もひなたも参加する。
団体で集まるのは、高校生らしくカラオケボックスだ。
「旭くん、学祭で歌った曲聞きたい〜!」
と女子が言えば、
「よっし! 歌え!」
とマイクを押し付けてくる裕也。
流されるままひとりで歌うのも癪なので、裕也にもマイクを持たせた。
俺よりもノリノリで歌う裕也に、聞きたいと言った女子は手を叩いて笑った。離れた所に座るひなたも、可笑しそうに笑っていた。
その後は順が回ってくるまで、食べたりしゃべったり。たまにマイクを渡され一緒に歌うこともあった。
盛り上がりも最高潮に達し、ここでメインイベントのプレゼント交換が行われた。
番号の書かれたくじを引き、振られた番号のプレゼントが貰える。
「えっ、いらな……」
俺が貰ったのは、裕也が女子が当たることを前提に買ったであろう手袋だった。
『フワモコ』が売り文句の、ピンクベージュ色のミトン手袋だ。ワンポイントにショップブランドマークのうさぎの刺繍が入っている。
しかもこの手袋……俺はため息をついた。
「なんで旭に当たるんだよ!」
裕也が本気で叫んでいるが、みんなに笑い飛ばされて終わる。悔しそうな裕也は「使えよ!」とだけ言った。
ふと、ひなたを見れば、当たったプレゼントを友達と見ているところだった。オシャレなパッケージのバスソルトは、俺が選んだものじゃない。
そう、上手くはいかないものだ。
「じゃ、仕切り直して誰歌うー?」
手を挙げた者がマイクを持ち、カラオケが再開された。
ひなたは友達と部屋を出ていった。
ひとりだったら追いかけようと思ったが……やっぱり、上手くはいかない。
帰りに二人きりになれるか? と、俺はショルダーバッグを見た。ひなたに用意した、プレゼントが入っていた。
数分後、部屋に戻ってきたのはひなたの友達だけ。
特に何も思わず、さらに数分後。戻ってきたひなたは、どこか元気がなく。
ひなたと面識がなさそうな、偶然来ていたという他クラスの女子達を連れてきたことに、不思議だなと思った。
マイクが回ってきても他の子に渡してしまい、笑顔がぎこちない。
どうしたのかと声をかけたかったが、他クラスの女子に囲まれて動けず。
そのうちに、ひなたは荷物を持ったかと思うと、先に帰ってしまった。
「裕也、俺抜ける……」
「えー! 旭くんの歌もっと聞きたーい!」
「抜けるなら、うちらも一緒に出よ〜」
追いかけることも叶わず。
ひなたの友達ががそわそわと部屋を出て電話し始め、他の女子達もピリついた。
こっそりと、ひなたにメッセージを送る。
返事は『この後、用事があって』と、それのみだった。
ひなたへのクリスマスプレゼントは、予定外にも一緒に年を越すこととなった。
最初のコメントを投稿しよう!