5月

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5月

   緑はあおあおと、色づく蕾は次々と花ひらいた。  新学期が始まってすぐにやってくるイベントといえば、ゴールデンウィーク。そして、中間考査。  結果としては、理数はそこそこ。文系は、並くらい。  文章が並ぶのは得意ではない。  隣の席のひなたを見ると、なんだか苦い顔をしていた。  そんな顔であまりにも結果票を見ているものだから、つい、笑ってしまった。 「ごめん。そんなに悪かった?」 「理数が、だめだめで……」  ずるずると机に伏すひなた。  これ見よがしな結果票を覗いてみると、理数は確かにボロボロ。でも、逆に文系が優秀。 「文系強いんだな。俺はそっちのが弱い」 「旭くんは、理数のほうが得意?」 「うん。ほら」  ひなたのを見てしまったので、俺も結果票を見せた。  ひなたの目は「おぉっ……!」というように輝いた。 「旭くん、頭いいんだね」 「そんなことないよ。文系は点取れてないでしょ」 「でも平均は取ってる」 「うわー、本当だ。俺はボロボロよ」  いきなり後ろから覆い被さって会話に入ってきたのは、友人の祐也だ。  ひなたと話しているとだいたい割り込んでくる、おじゃま虫。 「ところでさ、旭。さっそくお前目当ての女子がいるらしいぞ」 「はぁ? 何それ」 「何それじゃねぇよ、このモテ男が! トイレ付き合え!」 「うるせー」  引っ張られるままに席を立ち、ひなたに片手を立てて謝った。  気にしないでと、手を振って見送ってくれたように見えて。  ほんの一瞬だけ、悲しげな顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
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