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「知らなかった・・・」
珍獣扱い・・・少し自虐気味に言ってみたけど、これじゃあ本当に珍獣じゃないか。
「まあまあ。おかげで静かな学校生活だっただろ?」
少なからずショックを受けてる様子に慰めてくれてるけど、もしかして僕にずっと友達ができなかったのはこのルールのせい?
「実は高校も瀬名と同じところに行きたいやつは沢山いたんだけど、偏差値が高い上に男子校だったからなかなかハードルが高くてさ。オレたちの他に行ったのは二人だけだっただろ?」
で、その二人と真田が中学の時の『瀬名ルール』を高校でも広めたらしい。
「でもそのルールがまだ続いてたのが笑うわ。オレたちの布教活動は無駄じゃなかったと」
だからみんな僕に話しかけてこなかったのか。卒業して十年以上経つのに、みんな律儀だ。
「ま、オレもそばにいたしな。そうそう話しかけてくる強者はいないだろ」
真田は中高とかなりやんちゃだった。
転校してきて真田を初めて見た時、絵に書いたようなヤンキー振りにちょっと驚いた。
でももっと驚いたのは、そのヤンキーが同じ高校に来たことだ。
偏差値の高い、見るからに優等生が通うような学校に真田は入学式に金髪で現れたのだ。
その時の周りの反応は凄かったけど、学校側のお咎めはなし。全くなしだったわけじゃないけど、口頭注意ぐらいだった。
真田はヤンキーだったけど、頭も良かったのだ。
でも、ヤンキー慣れしていない高校の生徒はみんな、真田を怖がって近寄ってこなかった。
今はもう見た目はヤンキーじゃないけど、今日は同中の奴としか話してなかったのはその時の印象が強いからだろう。
「でも、用心することに越したことはない。あんまり裏で探されるよりはと思って顔晒しに来たけど、瀬名も気をつけろよ」
そう。実は今日はそれが目的だったのだ。
僕の目撃情報がSNSに上がり、まるでツチノコ騒動のように広まってしまったのだ。
今では何故か『瀬名を探せ』状態になり、嘘まで書き込まれるようになった。
あんまり分からなすぎても人は躍起になるので、今回顔を出してその騒ぎを落ち着かせようということになったのだ。
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