506人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
「噂になってる、て言っても今日あまり話しかけられなかったよ」
そう、せっかく行った会場で話したのはお世話になった先生方だけで、同級生は誰も僕のところには来なかったのだ。
初めから今日は顔を出すくらいで長くはいないと言っていたので、先生方だけだったけど少し話して出てきてしまった。だけど、噂になってると聞いたからもっと同級生に話しかけられると思っていたのに、ちょっと拍子抜けだ。
「今頃先生たちは質問攻めにあってるさ」
その様子を思い浮かべたのか真田が可笑しそうに笑うけど、やっぱりよく分からない。
「それにしても『瀬名ルール』が健在で笑ったわ」
「瀬名ルール?」
なんだそれ?
それについて真田に訊くと、学生時代の僕に対する周囲のルールらしい。
「中三の時に瀬名が転校してきた時、すごく話題になったんだよ。この時期に来るのも珍しいし、来たのがお前だろ?もう学年どころか学校中の騒ぎになったんだ」
なんで僕だと騒ぎになるのかよく分からない。
今までも転校を繰り返してきたけど、騒ぎどころかみんな遠巻きに見ててまるで珍獣扱いだった。
初めは寂しさも感じてたけど、途中から一人の方が楽だと開き直って周りのことを気にしなくなった。と言うか、いつの間にか気にならなくなった。
だから中三の時も僕的にはいつも通りだったんだけど・・・。
「みんなお前に話しかけたいんだけど、お前からは鉄壁の『話しかけるなオーラ』が出てて、それでもめげずに話しかけるやつが出てくると、今度はそいつが他のやつに責められる、みたいなことが起こって、いつの間にか『抜けがけ禁止』ルールが出来たんだよ」
で、僕は完全に観賞用になったらしい。そのルールにはさらに続きがあって、席替えや班行動などの時は必ずくじ引きで決める、というものだ。
それらを総じて『瀬名ルール』というらしい。
確かにやたらとくじ引きするなとは思っていたけど・・・。
最初のコメントを投稿しよう!