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顔は出すけど、個人情報は一切漏らさない。その辺はうっかり喋らないように気をつけたし、真田もそばで見ていてくれた。 今のところ特に誰が、という訳では無いのだけど真田が言うには少し気になる奴がいるらしい。ただそれはSNS上の話だ。実際は誰だかわからない。 「オレの気のせいだといいけど・・・とりあえずこっちに帰ってきてることは知られてるから、瀬名は一人で行動しないこと。あとをつけられないようにな」 あとをつける、てまるでストーカーみたいだ。十年振りに現れた珍獣にただ興味が湧いただけだと思うけど・・・。 大体ストーキングなんて僕にするわけない・・・と思って、白井くんを思い出した。そういえば白井くんは僕のあとをつけて会社と家を知ったのだ。 後から知ったので笑い話に出来たけど、当時まだ彼を知らない時に分かっていたら怖いし気持ち悪かったかもしれない。 確かに白井くんはいい子で何も起こらなかったけど、その人がもし本当に僕に執着していたとしたら怖い話だ。 「白井にも言ってあるけど、会社の行き帰りは必ず白井と一緒にいろよ。オレもなるべく会社に帰るようにするから」 さっきまでの和やかなムードから一転した口調に、僕は素直に頷いた。 少し大袈裟な、とは思ったけど何も無いと分かったら真田も安心するだろう。 真田はとにかく面倒見がいい。高校時代も今も、自分のことよりも周りのことを常に気にしている。そして今の一番の気がかりは僕のことだ。 「ごめん。迷惑かけてるよね」 「そんなことないさ。却って瀬名と話せて役得だよ。それよりこの後、うちに寄ってかないか?」 そろそろ着くという時に、真田が視線だけこちらに向けて誘ってきた。
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