510人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
そんなことをしてたら真田の家に着いた。
1階のコンビニで少し食べ物を買ってから3階へ上がると、リビングのソファを勧められた。
真田はそのまま別の部屋へ入っていく。
ここへ逃げてきた時、住む家はすぐ決まったものの即入居といかず、しばらく真田の家にお世話になったことがある。その時もそうだった。真田は帰るとすぐリビング脇の部屋に入る。そしてしばらくすると香る香り・・・。
「僕もお線香あげていい?」
部屋から出てきた真田に声をかけた。
前に来た時は何も思わなかったのに、今日はなんだかお線香をあげたくなった。
これも心に余裕が出来たと言うことか・・・。
真田は少し驚いた顔をしたけど、直ぐに体をずらしてドアを開けた。
そこは一通り家具はあるけど使っていない部屋のようだった。その一角にある仏壇。そこからお線香の煙が立ち上っている。
僕がそこまで行くと、隣に来ていた真田がお線香に火をつけて渡してくれた。それをあげて手を合わせる。
おそらく真田の母親だろう。写真の中で真田に似た目元の女性が笑っている。
僕は彼女に真田に会えたことと、これまでの感謝の気持ちを伝えた。
リビングに戻ると、真田がいろいろ用意していた。
「線香ありがとうな」
そう言って、僕にミネラルウォーターのペットボトルを渡した。
それを受け取りソファの前に座る。
「真田は偉いな。毎日手を合わせて」
真田は朝もお線香をあげている。
「習慣なんだよな。生きてる頃にしていた挨拶をそのままやってるかんじ」
真田は照れたようにそういうと、缶ビールを手に僕の隣に腰を下ろした。
「それが偉いんだよ。うちなんて仏壇すらないからね」
何気なく言った言葉に真田は動きを止めた。
最初のコメントを投稿しよう!