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びっくりしたように僕を見る真田に、言ってなかったことを思い出す。
「うちの親ももういないんだ」
「いつ?」
「結構経つよ。12・・・13年になるかな」
「・・・って、高校の時じゃないか!」
僕の親の亡くなった年を頭の中で計算したのか、真田がビールをローテーブルに置いてこちらに乗り出してきた。
「高三の時だよ。秋くらいに十日くらい休んだだろ?」
と言っても、真田はクラスが違かったから知らないかな?
「・・・あの時か」
思い当たったのか、頭を抱えて座り直した。僕が休んだのよく知ってたね。
「全然知らなかった」
「僕が学校側にお願いしてたんだ。受験の時期だったし、特別お葬式もしなかったからね」
仲が良かった両親は記念日のその日二人で出かけたきり、事故にあって帰ってこなかった。
僕の話にしんみりした空気になってしまったけど、僕は別にそんな風ではなかった。というか、全然ではないけどわりと平気。
「うちの親さ、『人はいつ死んでもおかしくない』ていう考えで、出かける時の『いってきます』も最後の挨拶かもしれない、ていう勢いでしてたわけ。だからあの時も、特にショックというか、逆に二人一緒でよかったね、て思ったよ」
あの夜、確かにショックではあった。
いってきますと言って出かけて行った二人が、揃って帰ってこなかったのだから。
だけど、二人一緒だと聞いて妙に安心した。
『いつ死んでもいいように、後悔しないように生きなさい』
何かにつけてそう言っていた両親に、きっと後悔はなかったと思う。
人生としては短かったかもしれないけど、とにかくお互いを愛していた二人が最後まで一緒にいられたのは良かったと思う。
「とにかく仲良かったから、今頃は向こうで二人で楽しんでるんじゃないかな」
僕は本当にそう思っている。
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