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毎年年の初めに遺言書の見直しをしていた両親は万が一の時のこともしっかり決めていた。 特に僕のことはこと細かく記してあって、生活面で困ることは無かった。 そこにはお葬式もお墓も一切要らないと言った内容もあり、僕と僕の後見人はその希望に従った。だけど、さすがにお墓は必要だろうと後見人が言うのでそれだけは実はある。 と言っても、いらないと言っていた二人がそこに居るとは思えないので僕は行ったことがない。 「そうか・・・。でもこれでお前に関する謎がひとつ解けたな」 真田はビールを飲みながら妙なことを言い出した。 「謎?」 「オレらの高校、付属校だっただろ?ほとんどの生徒がそのまま進学するのに、大学上がったら瀬名が居なくてさ。しかもいつの間にか家もなかったから『瀬名が消えた』て一時期騒ぎになったんだよ」 「消えた、て・・・。普通に外部受験して引っ越しただけだけど?」 別にこっそりいなくなった訳じゃ無い。 「今聞けばそうなんだけど、当時は誰も何も知らなかったから、急に瀬名が忽然と姿を消した、てなったんだよ」 当時のことを思い出してるのか、くくっと笑ってビールを一口飲んだ。 「知らなかった・・・。でももしかして、今のこの騒動もそれが原因だったりする?」 「だろうな。消えた同級生再び現る、てね」 なんだかライトノベルのタイトルみたいだ。 「大半は面白がって騒いでるだけだけど、ちょっと気になる書き込みもあるし、落ち着くまで瀬名も気をつけろよ」 念を押すようにもう一度言われて僕も頷く。周りは僕が思ってる以上に僕が気になるらしい。 「分かってるよ。一人にならないようにする」 騒がれるのは好きじゃない。しばらくは大人しくして早く収まることを祈ろう。
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