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同窓会から二週間がたった。 会社の行き帰りや買い物など、ちょっとしたお出かけにも白井くんが来てくれて、僕は一人になることはなかった。 白井くんは自分の経験から歩いている時も常に周りを気にして、ストーカーがいないかチェックしているようだ。 白井くんいわく、僕はガードが甘いらしい。普段は人を寄せつけないオーラがあるけど、歩いている時は一人の世界に入って周りを見ていないので、後ろを歩いていても気づかれないらしい。 そう言われても、まさか自分が尾けられてるとは思わないよね、普通。 大体若い女の子じゃあるまいし、アラサーの男を狙うなんて酔狂過ぎる。真田があんまり言うからそうなのかも、と思ったけど、あれから二週間経っても何にもないし、やっぱり真田の考えすぎなのではないかな? そう思い始めていたら今日の午後、急に白井くんが早退になった。と言うのも、お父さんが倒れたという知らせが入ったのだ。 どんな状況か詳しくは分からないけど、その知らせに青くなった白井くんはそれでもすぐに行けない旨を伝えていた。 そんなに重要な仕事を持っていなかったのにそう答えたのは、きっと僕のためだろう。だから僕は真田が来るまでここにいるから大丈夫だと伝え、白井くんには帰ってもらおうとした。なのに首を縦に振らない白井くんに、真田から直接電話が入った。 僕も真田ももう親がいない。なにかしてあげたくても、いなくなってしまったら意味がないのだ。真田も同じ考えだったようで、僕の連絡を受けたあと、白井くんに直接話したようだ。 僕と真田と、あとそのやり取りを見ていた他の社員たちに説得され、白井くんはようやく帰って行った。絶対に一人にならないように、きっちり僕に約束させて。 なので、僕は今真田の帰社を待っている。
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