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「子供は?妊娠してなかったの?」
陽性の検査薬を見たって・・・。
「妊娠中の友人に頼んだらしい。してたとしてもオレの子じゃない」
でも、そこまでしたということは、彼女は直人を好きだったんだ。でなければ、そもそも偽装とはいえ結婚なんてしないはず。僕は彼女の幸せを奪ったのかもしれない。
「何を考えてる?」
直人は黙ってしまった僕の顔を覗き込んだ。
「奥さんはナオが好きだったんだな、て」
「・・・だとしても、オレの心は最初からユウにしかない。それに、その事でユウが罪悪感を感じることは無いんだ。悪いのは全てオレだ。父親に逆らえず、言いなりになったんだから。そしてそれを全てわかった上で偽装結婚を受け入れた彼女のせいでもある」
偽装でもいいから、そばにいたかったんだろう。人形でもいいから、抱いて欲しいと願った僕のように・・・。
人を好きになるって、苦しいね。
「でも別れた、て・・・。僕が居なくなったあとも契約通り続けたんでしょ?結婚生活」
そう言った瞬間、直人の顔色がさっと変わった。
「お前が・・・」
直人の唇が震え出す。
「お前が・・・死にそうになんてなるからだろ・・・!」
その言葉と共にまた強く抱きしめられた。
僕は直人の急変に驚いた。
ナオ・・・泣いてる?
「目の前でユウの命が終わろうとしてるのを見ている時、オレがどんな気持ちでいたか分かるか?
どこかでユウが幸せに暮らしていると思ったから、たとえそばにいられなくても平気だった。オレじゃない誰かに向けられたとしても、ユウが笑っていてくれてたなら、オレはそれでよかったんだ。なのに・・・なのにお前は事故にあって・・・」
僕は顔を上げて直人を見た。
僕の事故を知ってた?
「知ってたの?事故のこと」
白井くんが知らせたの?
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