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今になって直人との始まりの記憶を思い出したのも、彼への思いを認めることが出来たからだ。 最初から彼は酷い人じゃなかった。 僕は直人に好意を抱き、直人もまた、僕を優しく扱ってくれていた。 最後の夜、直人はとても優しかった。 まるで大切なものを扱うように、僕を抱いてくれた。 あの夜の直人を変だと思ったけれど、今なら分かる。あの夜の直人こそが、本当の彼だと。 僕の態度が、直人を変えてしまっていたのだ。 それを思うとやるせなくなる。無駄だと分かっていても、もしあの時・・・と考えてしまうと、心が痛くなった。 けれど、直人の優しさを思い出したから、僕の体が彼を求めても、あの最後の夜の優しい行為を思い出すようになった。 僕の体がどうしようもなく疼いても、以前のような酷い慰め方はしない。 僕の体などお構い無しに、ただ己の欲望のままに抽挿されてイカされ続けた彼との交わりを思い出しながらの苦しい自慰ではなく、最後の夜の、僕の体を的確に愛撫しながら苦痛など一片もない、快楽のみを与えられる挿入を思い出してするようになった。 僕の中で、直人との行為が酷いものから優しいものへと上書きされたのだ。 直人がいない寂しさは変わらないけど、いまはもう惨めな思いは無くなった。 愛している人を思いながらの自慰は決して悪いことじゃない。たとえ相手が既婚者であろうと、もう別れた身だ。勝手に思っていたところで罪ではない。 だけど、白井くんには申し訳ない。 せっかく待ってもらってるのに、未だに直人を思いながらしてるなんて・・・。 ちゃんと忘れるようにするから、もう少しだけ待ってて欲しい。 でも、他に好きな人が出来たら遠慮しないでそっちに行ってくれていいからね。
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