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僕は助手席のシートに身を沈めながら、深く息をついた。 その様子を見て、運転席の真田が声をかける。 「お疲れさん」 「そっちこそ。運転させちゃって悪いね。お酒飲みたかったんじゃないの?」 今日は高校の同窓会だった。 同窓会と言っても僕たちの学年全部のなので、参加人数は結構多かった。 ホテルの会場を借りての大々的な立食式のパーティで、当然アルコールも出るから車で来るところでは無いのだけど、僕の送迎をしてくれると言って真田が車を出してくれたのだ。 「酒なんていつでも飲めるさ。それよりちゃんと瀬名を送り届けないとまずいだろ」 まるで小さい子供か年頃の女性の扱いに、僕は眉根を寄せた。 「僕だって家に帰るくらい普通に出来るけど?」 もしかして何も出来ないと思ってない? 「分かってるよ。でも誘った手前、オレが心配だったんだ」 そう言って前を見ながら、真田は笑った。 普段なら同窓会なんて参加しないんだけど、真田がどうしてもと言うので今回は出ることにした。 というのも、どうやら僕は噂になってるらしい。 大学進学を機にここを離れて約十二年。一年前に帰ってくるまで一度も帰ることは無かった。 帰ってきてからも徒歩十分の会社と家の往復だけで、どこにも出かけていなかったのだけど、白井くんが来てからは少し出歩くようになっていた。 出歩くと言ってもまだ映画を一回見に行っただけなのだけど、それを同級生の誰かが見ていたらしく、それが何故か学校関係者の間で話題になってしまったらしい。 芸能人でもないのに、なんで話題になるのだろう? それを真田に訊いたら、 『お前は学校じゃ有名人だからな』 と言われ、ますます分からなくなった。 忙しい真田にはこれ以上訊けず、その話を白井くんにしたらちょっと困ったような顔をされた。 『でもオレ、瀬名さんのそういうところも好きです』 これまた分からない答えが帰ってきて、結局何でか分からなかった。
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