婆さんが暮らしてた家

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婆さんが暮らしてた家

 爺さんと婆さんが暮らしてた家は戦後すぐに建てた古い平屋の木造家屋で、冬はすきま風が酷かった。 「すきま風があるから、火鉢を使っても一酸化炭素中毒になるってェ心配はまずねぇんだ。こいつぁ信楽(しがらき)焼なんだぜィ。つやッつやで綺麗な瑠璃色だろう?」  ごま塩頭で角刈りの爺さんは生前、鉄瓶乗っけたお気に入りの丸火鉢にあたりながら言ってたんだけどさ。  火鉢の一酸化炭素中毒で命は落とさなかったものの、風呂上がりにすきま風で命落としちまったらしょうがねえよ。 『ヒートショック』って言うらしい。特に年寄りが冬場、大きな寒暖差でやられっちまうんだ。  だから婆さんを一旦うちに引き取ると、父さんは爺さん婆さん()の改築を町大工の棟梁に依頼した。 「冬でも(あった)けぇ家を建ててくれ」って。
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