婆さんが暮らしてた家

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 父さんは宮大工だから、家の建て替えは町大工に頼んだんだ。「『餅は餅屋』だからな」って。 「あの棟梁は岩手出身だから、冬でも(あった)けぇ家が得意だ」って評判を聞きつけてさ。 「うちのご先祖は岩手出身だし、これも何かの縁だろう」ってんで、父さんと棟梁はすっかり意気投合した。  棟梁が「家造りには宮大工の原さんの意見も聞きたいし、宮大工の技も教えてもらいたい」って言うもんだから、父さんは大乗り気。  家が完成するまで宮大工の仕事は引き受けず、改築工事にかかりっきりだった。  俺は毎日学校が終わると工事を見に行き、毎日父さんと一緒にうちに帰った。  棟梁と真剣に打ち合わせをしてる父さんはカッコよかった。若い衆に指示を出す棟梁もカッコよかった。  棟梁と若い衆に宮大工の技を見せてやってる父さんの姿を見て、俺は鼻が高かった。  うちの父さん、すげぇだろ?って。
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