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婆さんの好きな佃煮
「セロリの葉っぱを佃煮にすると美味しいんだよ」
同居開始から数カ月後、婆さんはこんな事を言い出した。
それで母さんが、いつもは捨ててたセロリの葉っぱで佃煮作って出したら、婆さんは、
「美味しい、美味しい」
って佃煮を肴にして、ビールを旨そうに呑んだ。
セロリの葉っぱの佃煮はビールが進むらしく、婆さんはいつもよりたくさん呑んで上機嫌になって金歯を見せて、歌まで歌い出した。
普段、歌なんか絶対歌わないのに。
婆さんの歌なんて、歌好きだった爺さんや親戚や普段無口な父さんが酔っぱらって歌い出す新年会でも聞いた事なかったのに。
その婆さんが歌なんか歌い出したもんだから、俺はおったまげたね。
しかも滝廉太郎の『花』。文部省唱歌って、小学生かよ。
呑んで歌うなら、八代亜紀の『舟唄』とか小林幸子の『おもいで酒』とか、なんか酒がらみの演歌でも歌えよ。
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