16人が本棚に入れています
本棚に追加
婆さんの糠床
マスク姿の俺は、スーパーでいろんな食材とビールを買い込んでから、一人暮らしのアパートに戻った。
今夜は麻婆ナス。セロリも買ったからスティックサラダにする。味噌マヨは金山寺味噌で作った。
残りのセロリは、実家から分けてもらった糠床に漬けた。
俺たちと同居する時に、婆さんが持ち込んだ糠床だ。
それに母さんが足し糠しながら、今もずっと糠床を守り続けている。
糠味噌の塩梅を見ながら、炒り糠とか粗塩とか出し昆布とか糠味噌辛子とか重曹を補充して。
それらもさっき、スーパーで買っといた。
「ナス漬けるんなら明礬も買っとくんだよ」
って母さんに言われたから、明礬も一緒に。
これをナスになすり付けてから漬け込むってえ寸法よ。これは、ナスの色落ちを防ぐ先人の知恵だ。
色落ちした茶色いナスよりも、色鮮やかな紫紺色のナスのほうが食欲をそそられンだろ?
料理ってのは、彩りも大事な要素だかんな。
「食えりゃ良い」ってわけじゃない。見栄えも大事なんだ。
家だって「住めりゃ良い」ってわけじゃないのと同しだ。そこは大工としては譲れねえわけよ。
最初のコメントを投稿しよう!