最終話

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最終話

 セロリの葉っぱが残った。まだ全然黄色くなってない。  綺麗な緑色で葉先までピンッと瑞々しくって、爽やかな匂いがする。  これ、捨てんのはもったいねえな……。  セロリ代は俺が働いて得た給料から出ている。俺が払ったセロリ代には、葉っぱ代も含まれてる。  その葉っぱを捨てるのは、せっかく稼いだ給料の一部をみすみす捨てちまってるようなもんだ。  それで……佃煮をだな、作ってみたわけさ。  セロリの葉先から四ミリ幅に刻み、砂糖の代わりに日本酒使って、あとは醤油と煎りゴマで適当に味付けした。  まーあ、ビールが進むこと!  ゴマのプチッとした食感がアクセントになって、噛めば香ばしさが弾ける。  煮切った日本酒の風味は、ややクセのあるセロリの匂いを穏やかに和らげている。  砂糖不使用の上品な甘さが、加熱したセロリの葉っぱのほろ苦さと相まって、絶妙なハーモニーを奏でてるじゃねえか。  これがもう、(うめ)えの(うま)くねえのって!
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