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だから、俺のアロハを婆さんに着せることにしたんだ。
黒地だから、見苦しいもんが透けて見えない。うちの婆さんにゃお誂え向きだ。
「これ、あげるから着てくんな」
「え! だってそりゃ、銀ちゃんのシャツだろ?」
「この柄、気に入ったんだろ?」
「そりゃあ、イイ柄だもんねえ」
婆さんは相好を崩す。上の前歯の金歯を光らせながら。
「だったら是非とも、このアロハを着てくれ。着てほしいんだよ」
俺が強く要請してアロハを渡すと、婆さん大喜び。以降、毎日アロハだ。
婆さんは、晩ごはん前に風呂に入ったついでにアロハを手洗いして、厚みのあるハンガーにかけると縁側に干し、シャツを両手ではさんでパンパン叩く。
と、朝にはもう乾いてるから、翌日もまた着ちまうんだ。
「他の服も着なよ」
っつっても全然聞かない。
「あたしゃこのアロハがイイんだよ!」
って言い張って。
だから空気読めよ、婆さん。それしか服持ってねえみたいに見えんだろ?
ご近所さんにうちが貧乏だって思われっちまうよ。
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