女子高生みたいな婆さん

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女子高生みたいな婆さん

「あたしゃねえ、髪を一遍(いっぺん)も染めた事がないんだよ」  そう、婆さんの頭にゃ白髪がほとんどない。若々しい黒髪がご自慢で、そのうえ声が異常に若いと来てる。  人懐っこい婆さんは電話も大好きで、電話が鳴ると犬みてえに飛んでいく。 「はい、原でぇす!」  って嬉しそうに元気よく電話に出る。声だけ聞くと、まるで女子高生みたいなんだ。  あれは俺が高二の頃だ。夜、ひとっ風呂(ぷろ)浴びてパジャマに着替えてると電話が鳴った。  婆さんが走ってく足音。 「はい、原でぇす!」  婆さんがいつものように元気に電話に出たんだけど、どうも様子がおかしい。 「もしもし? もしもし! あんたみっちゃんかい? 苦しいのかい?」  俺が洗面所から出て、 「どうした?」  って尋ねると、 「なんか酷く苦しそうなんだよ。みっちゃんが具合悪くなって助けを求めてんのかもしんない!」  って婆さんは青い顔。  ピンと来た俺が受話器を借りて聴いてみると、激しくハァハァ言ってる。やっぱりだ。  ちっと前に教室で、 「うちにエロ電話かかってきた!」  って女子たちが話してたの思い出して、もしかしてと思ったんだよ。 「今の、うちの婆さんだぜ」  変態男に教えてやると、  ガチャ!  ツー、ツー、ツー。 
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