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「切れたよ」
と婆さんに受話器を渡す。
婆さんは受話器を耳に当てて確認すると、無言で電話機に戻した。
「今のはいたずら電話だ」
「みっちゃんかもしんないじゃないか!」
婆さんは事情を飲み込めてない。
「ほんとに苦しいってんなら、うちじゃなくて119番にかけらぁな」
「けど、もしみっちゃんだったら……」
まだ事情を飲み込めない婆さんは、パープル藤崎を心配してる。
パープル藤崎ってのは、白髪を紫色に染めてる粋なご近所さんのことだ。俺が心ン中で勝手に命名したんだけどさ。
「じゃ、藤崎さんちに電話して確認してみな」
「うん、そうだね」
婆さんは真剣な顔で電話をかける。
「……みっちゃん、無事だったんだね! ああ、良かった!」
婆さんはパープル藤崎の無事を確認すると、事情を説明してから電話を切った。
そんで俺に振り向き、金歯を見せながら嬉しそうに言った。
「みっちゃん元気だったよ」
やれやれ……。
『出てみたら 相手ハァハァ エロ電話』だろ? そんくらい空気読めよ、婆さん。
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