俺と婆さん

1/1
前へ
/12ページ
次へ

俺と婆さん

 俺はまだ、半人前の浅草の町大工。ベテランに言わせりゃ『まだまだケツの青い鼻垂れ小僧』で、ちっとばかし前に『二級建築大工技能士』って資格を取ったばっかだ。これからも技能を身に着け腕を磨いて『一級建築大工技能士』の資格を取って、一人前の大工になったら所帯を持つのが夢だ。おっとそれまでに運命の女性に巡り合わなきゃな。ショートヘアが似合う、竹を割ったようなさっぱりとした気性の女性が俺の理想だ。  さて、二〇十九年の女性の過半数が九十歳まで生きるご時世だ。還暦(かんれき)(六十歳)の後にも古希(こき)(七十歳)・喜寿(きじゅ)(七十七歳)・傘寿(さんじゅ)(八十歳)と慶事がある。平均寿命を超えたら、米寿(べいじゅ)(八十八歳)・卒寿(そつじゅ)(九十歳)・白寿(はくじゅ)(九十九歳)・百寿(ひゃくじゅ)(百歳)と慶事があるんだ。  で、問題はうちの婆さん。ボケてるわけじゃないんだ。新聞も毎日しっかり読んでるし、公共放送のニュース番組だって毎日欠かさず観てる。  けど、本人は決して悪気はないんだが、どうにもこうにも空気が読めないんだ……。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加