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みんなの輪に加わるのが苦手なわたしと、常にみんなの中心にいる戸倉さんが、似てるわけないもの。
ところが戸倉さんは「いいや、似てるよ」と反論してくるのだ。
「僕は人当たりがいいと言われてるからあまりバレることもないけど、実際は、白河と同じで、他人と深く付き合うのが好きじゃないんだ。自分の誕生日を知られたくないのは、そんな理由もあるからだ。一人一人は特に悪い人間だと思わないのに、それが集団になると苦手意識が生まれてくる………ほらね、似てるだろう?」
「でも、」
「白河が何と言おうと、僕は、白河と僕が似てると思ったんだよ」
反論に対する反論は受け付けないとばかりに、戸倉さんは断言した。
そう言われてしまえば、わたしは何も言い返せない。
戸倉さんは満足げな顔をすると、組んでいた足をベッドにスライドさせて乗せた。
少し、わたしに近づいたのだ。
「自分と似てるなと思ったら、白河のことが気になりだした。誰にも打ち解けようとしないのに、誰よりも周りのことを見てる白河を、好きになっていった。優しすぎて上手く立ち振る舞えない不器用なところが、かわいいと思った。同期達と親しく付き合えない自分に劣等感みたいなものを感じてる素振りが見えたときは、白河には白河の良いところがたくさんあるんだよって、すぐにでも言って頭を撫でてやりたかったよ」
戸倉さんの指が、わたしの唇に伸びる。
親指が左から右へなぞると、まるでキスされているような感覚がした。
「白河は気付いてないみたいだけど、僕は、どうやって白河の中に入っていけるか、いつもタイミングを見計らっていたんだ。計算して偶然を装ったり、さりげなく、でも確実に白河との距離を縮めていった。言われてみれば…って、思い当たることはない?」
指先のキスは妙な色気を増して、いつの間にか、わたしの唇の中に侵入してきて………
「例えば、頭を撫でたり肩を叩いたりして、さりげなく、いつも白河に触れていた。気にならなかった?」
「あ……」
わたしの口から指を抜くと、今度はシーツの中に手を這わせ、足の付け根辺りを意味深に辿った。
「……っ」
いたずらな指先に煽られそうになりながら、わたしは懸命に頭を働かせる。
……確かに、戸倉さんはよくわたしに触れてきたし、会議室で鉢合わせたり、他にも思い当たることがないわけじゃないけれど。
でもまさか、わたしがここに来ることも含めて、全部が戸倉さんの計算だったの?
ちょっと思い返しただけでも、あれもそうだったんじゃ…、もしかしたらあれも…?なんて疑惑が次々と出てくる。
わたしが記憶の中の戸倉さんを探していると、目の前の戸倉さんは、フッと、ちょっと意地悪そうに口角を上げた。
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