考えるシャツ

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 半年前まで人間だった私は、毎朝大学に行く途中に会う彼のことをひそかに想っていた。交通事故に合い、意識がなくなる直前、ただのシャツでもいいから彼の側で生まれ変わりたいと願った。  そして今ここにいる。  話すことができなくても、シャツとして彼の側にいられる。  彼が食事をし、眠るまでただ彼を見下ろし1日を過ごすのだった。  2日後、はじめて彼が私を着てくれた。彼の肌に直接触れられて、眩暈がするほどうれしかった。  彼の肌の温もりに胸が高ぶり、心拍数が上がった。もちろんそんな気分なだけで、シャツに心臓なんてないけれど。  彼の厚い胸板や肩に触れているだけで幸せだ。汗と体臭の混ざった匂いが心地よい。少しだけ触れる鎖骨や、脇の下にキュンとした。  そしてかすかに感じる胸の突起。彼の上半身を体全体で感じ、恍惚とするのだった。
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