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それから3日おきに彼に着られるようになった。
間の2日間は彼が仕事で家にいないことも多く、帰ってくるまで寂しい思いをした。
今日は何時に帰ってくるのだろう。彼が帰ってくるまでは、ただ何もせずに待っているだけのつらい時間だ。
そのとき、隣のシャツから声が聞こえた。
「新入りさん、どうも」
私とローテーションで着られているシャツ君だ。
シャツ同士で話ができるなんて今まで知らなかった。といってもここに来てからまだ1週間。
シャツ君から私と入れ替わりでいなくなったシャツさんのことを聞かされて、複雑な気分を隠せなかった。
「僕もシャツさんほどでないけれど、だいぶよれよれになってね。まだしばらく着てくれるといいけどね」
シャツ君はここに来てから2年というから、だいぶ年長だ。シャツさんは10年もの長い間彼と一緒に過ごしたらしい。
「シャツさんは、別れ際に何か言ってらしたのですか?」
自分もいつかそうなるのだと思って聞いてみた。
「これだけ長い間賢人さんの側にいられたのだから、思い残すことはないとさ」
賢人さんという名前をはじめて知り、私は高揚した。
次に彼に着られたとき、密かに賢人さんと名前を呼んだ。もちろん声は届かない。
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