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「ごろうくん!!」
あじさい幼稚園のあやちゃんが、空蝉の屋台で火車ローランドごろうを見つけた。
ママの手を離し、一目散に駆けてくる。
あやちゃんを受け止めた、若干顔色の悪いごろうくん、全身全霊の笑顔をあやちゃんに向けた。
「やっとあえたぁ〜。あや、ずっとさがしていたのに」
「聞きましたよ、あやちゃん。私を待っていてくれたとか。やっと会えましたね、可愛らしいお姫様。さぁ、こちらへ座って、一緒にどんど焼きの炎を眺めましょう。大丈夫、どんどの炎など小さい小さい。この火車ローランドごろうの炎には勝てません!あ……心の炎ですよ?もうすぐ火入れですが、火の粉があやちゃんにかからないようにこの火車ローランドごろうが指先1つで守りましょうぞ」
うざい・くどい・ながい、三拍子揃ったごろうくんのお喋りにも、あやちゃんはニコニコ笑って手を離さない。
「おや、もう火入れするようですね?さすが理事長、臨機応変だ。来てくれた人間共を飽きさせない演出はアッパレ!おっと、あやちゃんの前で人間共などと……不覚っ!嬉しさに浮かれてしまったようですね。人間さんと言い直す事をお許し下さい、あやちゃん」
「ん〜?あや、わかんない。ごろうくん、何かいい匂いがするね?」
理事長の火入れに合わせて、屋台も前倒しで営業開始だ。
薔薇クラスの豚汁は、身体を温めてくれる。
どんど焼きに欠かせないぜんざいは、すでに行列になりかけているようだ。
桔梗クラスが慌ただしく動いている。
常盤ロボックの常盤社長と前島は、ねじり鉢巻きも勇ましく、器用にクルクルとたこ焼きを回している。
「さぁ、あやちゃんどうぞ!フルーツたっぷりのクレープですよ。我が空蝉の宿は、本日クレープ屋さんなのです。いちご、バナナ、キウイフルーツ。ツナにサラダにシンプルチーズ!私はハチミツチーズをいただきましょうか。甘じょっぱいこのクレープは、今の私の心のようだ」
「ありがとう、ごろうくん。きょうはずっと一緒だよ?ぜんぶたべたい」
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