22人が本棚に入れています
本棚に追加
始業のベルが鳴っても、教室が静まる事はない。
教壇に立ち授業を始めても、誰も真剣な眼差しを向けない。
高校教師になって1年、山崎一は完全に舐められ、馬鹿にされ、無視されている。
憧れは熱血教師。
3年間という短い生徒達のアオハルを、精一杯有意義な時間にしてやりたい。
なのに……。
「ウザイ」
山崎の熱い思いは、生徒達の冷めた一言で打ち砕かれた。
構い過ぎも良くないのかと、少し抑え気味に接すれば、モンスターペアレンツが怒鳴り込んできた。
「やる気あるの?」
「頼りないにも程がある。だから新米は駄目なんだ!」
新米教師の山崎は、すかさず同僚に相談する。
こんな時は、先輩教師のアドバイスが頼りになるものだ。
「モンスターペアレンツ?適当に処理して。反抗的な生徒?適当に処理して。熱くなったら駄目だ。笑顔でハイハイ言っといて」
やる気のない同僚に反発すれば、次の日から誰も口をきいてくれなくなった。
生徒だけではない、教師も親も世の中さえ何処かおかしい。
いじめ、援助交際、パパ活。
半グレ、闇バイト。
盗撮、淫行、教師間いじめ。
何かが違う。
どこかがズレている。
ここは高校なのに……。
夜中に何度も目が覚め、眠れなくなった。
始業のベルを聴くとじんましんがでる。
情けなくて涙が滲めば、血尿も滲む。
極めつけは、謎のくしゃみだ。
授業中に、何度もくしゃみがでる。
「またかよ〜!キモいんだよ、そのくしゃみ〜」
「ほんとそれ!」
生徒達にはやし立てられると、ますますくしゃみは止まらない。
授業になったもんじゃない。
「どうして……僕の何が気に入らないんだ……それにどうして止まらないんだよ、このくしゃみ……」
情熱が冷めていく。
代わりに込み上げてくるのは、昨夜食べたカルボナーラだ。
「虚弱かよっ!吐くなら出てけよ」
「毎日青い顔してウザイんだけどぉ」
体調が悪くなればなるほど、生徒達は攻撃的になった。
まるで山崎に、トドメを刺すかのように。
最初のコメントを投稿しよう!