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「なんだか今日はぁ、姥桜学園がざわついていますぅ」
どのクラスもいつもの元気は陰をひそめ、ソワソワと落ち着かない。
首を傾げながら授業をしていると、水木がプリントを持って来て耳打ちした。
(放課後、大焼き芋大会があるのよ)
「大焼き芋大会……なんだ、焼き芋ですか」
突然、天井のパトランプが回った。
もちろん、最近不機嫌な理事長が走って来る。
「いけませんね、長山先生。姥桜学園の焼き芋大会を侮蔑するような発言。そんな事では、いつまでたっても乙女達に信頼されませんよ?」
大焼き芋大会の準備だろうか、煤に汚れた理事長が颯爽とやってきた。
すかさず薔薇乙女数名が、理事長の煤を払ってやる。
「はぁ……でもぉ〜、花凛はスイートポテトが好きかな」
慌てて口元を押さえたが遅かった。
あれだけソワソワ夢見心地だった薔薇乙女達が、一斉に殺気を放ったからだ。
「違う、違いますぅ〜、花凛はボソボソした焼き芋がぁ、苦手なんですよぉ」
ガタンと椅子を倒し、長山先生のところにやってきたのは、薔薇クラス出席番号12番、水木早苗だった。
「先生やり直しなさい!芋を舐めすぎ!ほら、花凛先生は私の席に座って」
シッシッと席に追いやられ、ふくれっ面の長山先生は水木の席に座った。
腕を組んで「やれるものなら、やってみなさいよ」と、偉そうに構えた。
「はい、注目ー!美味しい焼き芋を食べる前に、さつまいもについてもっと勉強しようよ!」
水木の実家は八百屋さん。
大型スーパーの進出で苦境に立たされた苦い経験をバネに、スーパーでは真似のできない地産地消の新鮮で身体に良い野菜を販売しだした。
今では人気の八百屋さんだ。
変わった品種も取り扱い、調理方法も教えてくれる。
希少な野菜はコスパは悪いが、旬のお値打ち品が主婦に大人気だった。
「花凛先生って、どんなさつまいもを食べたのやら……最近のさつまいもを舐めすぎ」
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