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水木は黒板にねっとり系と書く。
大半の薔薇乙女達が身を乗り出した。
ホクホク系。
残り少数が満足そうに頷く。
「ねっとり系はなんて言っても安納芋よね!焼いた安納芋からは、蜜が染み出るくらいだから」
「そうそう!舌に絡みつくねっとり感。近所の変態オヤジの絡みつくねっとり視線はごめんだけど、安納芋のねっとりならば一生絡みついて〜!!」
普段大人しい藤川が、騎馬戦以来の勇ましい姿を見せる。
「落ち着いて、藤川さん。ねっとりした安納焼き芋には、コーヒーが合うんだな〜。試してみて?」
ねっとり安納芋派は、激しく頷いている。
「で、次はホクホク系ね。オススメは紅あずまかな。素朴な甘みとホクホク感のバランスがいいよ?バターをつけて食べたら最高!相棒は牛乳ね」
「紅あずまー!あれはバターが合うんだな!ちょっとお高いコクのあるバターを少し……もう、死んでもいい!あ、死んだら食べられない……ジーザス!」
毎日忙しい本田の癒しは、冬のバター焼き芋のようだ。
「ねっとり系とホクホク系の真ん中はね、シルクスイートかな。その名の通り、絹のような舌触りなの。甘さはマイルドで、岩塩をパラパラしてごらん?もん絶必須だから!!」
食べていないのにもん絶している薔薇乙女達。
焼き芋なんてボソボソして美味しくないと言っていた長山先生でさえ、バター……とか岩塩お洒落……とか呟きだしている。
理事長は満足そうに微笑むと、ますます準備に力を注ぐ為、教室を静かに去った。
「さつまいもは品種によって、硬さも甘さも、舌触りや色までも違うんだから。今日、焼き芋にするのは金時芋でしょ?硬さとなめらかさのバランスが良い万能の品種。万人に喜ばれる事間違いなし!」
水木のさつまいも授業に、猛獣の雄叫びが起こった。
教室は異様な熱気に包まれ、さながら焼き芋大会前哨戦の雰囲気を醸し出している。
いや、焼き芋だけでだ。
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