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水木のイモ授業を受けた薔薇乙女達と長山先生は、終業のチャイムが鳴るやいなやさつまいも貯蔵庫へと走り出した。
冷え込む廊下も何のその、猛獣の突進のお通りだい。
貯蔵庫には時任先生が居て、さつまいもの入った重いダンボール箱を運び出している最中だった。
「時任先生!助っ人に来たよ!」
薔薇乙女達と時任先生は、ダンボール箱を一旦調理室に運び、土を洗い流す。
冷たい水も苦にはならない。
乙女達の口元はだらしなく緩んでいる。
授業の終わった桔梗乙女達も、次々とダンボール箱を運んで来た。
他のクラスの乙女達は、校庭で焚き火の準備だ。
「えっ……何これ?本格的なんですけど」
校庭3箇所に、竹やワラで小さな櫓が組まれていた。
櫓には枯れ草や落ち葉がまわりを覆い、燃えやすくしてある。
理事長が真冬の汗を拭きながら、乙女達にレクチャーしてくれる。
「皆さんの育った故郷にも、小正月に行うどんど焼きはありましたか?小正月は過ぎていますが、どうせならと、どんど焼きも兼ねてみました」
小正月に行われる「どんど焼き」は、災いを満月と火で払う祭りだ。
お正月飾りからお守りやお札、書き初めなどを一緒に燃やして1年の無病息災、商売繁盛、家内安全を願う。
「理事長、私の住んでた大阪やと、とんど焼きってゆってたわ。子供のお祭りやってん」
「へぇ〜!私は道祖神祭だったかな?どんとか、とんとか……聞いた事ないけど」
「地方によって呼び方が違うようですね。左義長、鬼火たき、などとも呼ばれます」
洗ったさつまいもを手に、乙女達は珍しそうに櫓を触っている。
「そういえば子供の頃、書き初めを燃やしに行った記憶が……字が上達するとか親に言われて」
「あぁ!火が高く燃えたら字がきれいになるって言われた。ドキドキして燃やしたわ」
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