焼き芋の15:30分

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自分達の為すべき事に取り掛かり、校庭は理事長だけになった。 「自分達の焼き芋大会より、地域の子供達ですか……私はそんな乙女達の為ならば、なんだってします。任せなさい、乙女達!」 ひょんな事から、明日は姥桜学園どんど焼き祭りになった。 地域の子供達を迎えるならば、乙女も先生も理事長も張り切ってしまう。 夜遅くまで、準備は続いた。 今日の懇談は、出席番号12番水木早苗だ。 だが、いつものように応接室で優雅に懇談とはいかなかった。 けれども、山崎にとって懇談は後回しにして良いものではない。 調理室でフル回転している水木早苗に張り付き、立ち話スタイルの懇談中だ。 「水木さんのさつまいも授業、僕も受けたかったです」 「やだ、X先生も焼き芋好きなんだ?」 こんにゃくを手でちぎりながら、懇談を受ける水木に、まわりは興味津々だ。 ちなみに明日の豚汁の下ごしらえ中。 「焼き芋が特別好きとかではなく……あ、にんじんは千切りですか?いちょう切り?」 「どっちでもいいよ?早い方で。授業って難しいのね。何かを教えたり、伝えたりって頭で纏めてから話さなきゃいけないから」 「確かに……一生懸命な気持ちだけでは伝わらない……」 水木の手が止まった。 「そんな事ないよ。それは伝わっているから」 再び水木の手がこんにゃくをちぎり出した。 リズミカルにポイポイとボウルに放り込む。 「そうですか……伝わってますか……に、にんじんって、切ると涙がでますねっ!!目に染みる!」 「そうね。X先生のにんじんはそうなのかもね」 水木の懇談は、山崎の涙を誘った。 明日は子供達に、何を教えられるだろうか。 伝える事の大切さを学んだ山崎だった。 「今夜は徹夜かもー!張り切っていくよー!」
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