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早朝のグランドに、3台のトラックが入って来た。
辺りはまだ暗く、冷たい空気は分厚いコートの隙間を狙って侵入を謀ろうとする。
「1時間で設置する。任務開始!」
暗闇の中で、いくつかのヘッドライトが忙しく瞬いている。
姥桜学園が地域の子供達に、どんど焼き祭りを開催すると云う。
しかもそれは、自分達の焼き芋大会を変更しての事。
「アッパレな精神力。焼き芋の誘惑に打ち勝ち、子供達にどんど焼きを体験させたいなど……この神谷聖子、感動の極み!急ぎ設置!屋台は4つだ、速やかに設置するんだ!」
ものの30分で設置完了させたスポンサー企業麒麟COMPANYの神谷聖子は、満足そうに頷くとトラックで帰って行った。
誰もいない夜明け前の校庭に、ユラリユラリと提灯が近づく。
その提灯を迎えるように浮かび上がるは狐火か。
「おや?屋台はもう出来てある。なら、さっそく取り掛かろか?」
おやおや。
スポンサー企業空蝉の宿の女将さん、妖怪引き連れ何をしにきたのやら。
「わたくしは昼間でも夜でも、24時間化けられるけど、あんたらは朝日が苦手なんやろ?情けない……役立たずは、今のうちに死ぬ気で働きや」
子分妖怪達、闇夜に紛れて働き出した。
朝日より怖いのは、女将さんだからだ。
1つの屋台に空蝉の提灯がかかり、準備が始まった。
空蝉屋台が出来上がると、入れ替わりに夜明けの太陽が顔を出した。
校庭に黒い高級車が滑り込んで来た。
「前島。前島〜、前・島・君〜、姥桜学園に着いとるがな。はよ、働け!」
関西スポンサー企業常盤ロボックの常盤社長と前島コンビだ。
運転ご苦労様でした。
「ここがええ!この屋台で勝負や。チンタラすんなよ、前島君」
これが理事長の人徳だ。
理事長のお願いに、スポンサー企業が勢ぞろいした。
少し怖いのは気のせいだろうか。
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