22人が本棚に入れています
本棚に追加
出来上がった豚汁とぜんざいの大鍋を校庭に運ぶと、いつの間にか4つの屋台が設置してある。
1つには「空蝉」の提灯が揺れ、もう1つには「常盤」の幟が風に揺れている。
「女将さんだ!嬉しい!絶対に美味しい物を食べれるよね?」
「イヤン、常盤社長?眼福過ぎるでしょうが!化粧を直さなくちゃ!」
残り2つの屋台にそれぞれの鍋を運び込むと、朝の冷たい空気に身体が震えた。
天気は良さそうだが、さすがに寒い。
「火入れは午前11時だって!集まってくれるかな〜」
薔薇乙女達と桔梗乙女達は屋台の食べ物を担当する。
アマリリス乙女達と水仙乙女達は、どんど焼きの櫓の管理だ。
そしてMJG乙女達は、来てくれた子供や親達にどんど焼きの説明をし、一緒に楽しむ。
火力が弱まった頃合いを見計らい、14:00くらいにはさつまいもが投入される予定だ。
人の出入りが激しくなる姥桜学園の校内には、関係者以外立入禁止で、不審者は地獄に仏クラスが取り締まる。
豚汁とぜんざいの準備に追われていた乙女達は、ポツポツとやって来る親子連れに気が付いた。
時刻は10:00になろうとしている。
「まだ燃えてないね?」
子供は好奇心旺盛で、珍しそうに櫓を眺めている。
親世代も、懐かしがる人もいるが不思議そうな顔で見ている人もいた。
「オーイ!間に合ったかな?これを燃やしてくれ〜」
自治会長がドスンドスンと走って来て、立派なしめ飾りを櫓に挟み込んだ。
「いやぁ、良かった!良い年になるな!どんどでしめ飾りを燃やすのは何年ぶりか」
姥桜学園の校庭に、どんどん地域住民がやって来る。
「思ったよりも皆さん来てくれていますね。しかも、早い」
理事長が校庭を見回すと、簡易休憩スペースのテント下にも、おじいちゃん、おばあちゃんが熱茶を持参して寛いでいた。
最初のコメントを投稿しよう!