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「赴任先の資料、どこいったっけ……」
薄いファイルにたくさんの資料が挟まり、パンパンに膨らんでいる。
「随分と凄い枚数の資料だな。赴任先は……姥桜学園?姥桜……聞いたことないな」
その姥桜学園の資料を読むのに、2時間かかった。
特別変わった所もない女子校。
丁寧に紹介されてある資料に身構えたが、今まで勤めていた高校と大差はない。
「明日、挨拶に行かないとな」
さっきまで、もう教師を辞めようかと思っていた。
今の時代に、自分のような熱血教師などお呼びではない。
正義感は返って仇になる。
ただ、まだ教師になって1年だ。
2年目はまるまる休職していたから、ここで辞めるのは意気地がなさ過ぎる気がした。
辞めて、どんな仕事に就いても、自信を失ったままなら上手くいかない気もする。
「だけど。奮い立つ気力がないな……こうやって、なあなあ主義の教師が増えていくのかなぁ」
姥桜学園の資料が、バラバラと散らばっている。
山崎は、ダルそうに資料をかき寄せるとファイルにしまい、そのまま小さなデスクの引き出しに放りこんだ。
「とりあえず、様子見でいくか。どうせ、どこの学校も同じだろうし」
新天地を与えられても、場所が変わるだけ。
山崎は、自信もやる気も失くした抜け殻教師になっていた。
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