自宅の19:20分

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「赴任先の資料、どこいったっけ……」 薄いファイルにたくさんの資料が挟まり、パンパンに膨らんでいる。 「随分と凄い枚数の資料だな。赴任先は……姥桜学園?姥桜……聞いたことないな」 その姥桜学園の資料を読むのに、2時間かかった。 特別変わった所もない女子校。 丁寧に紹介されてある資料に身構えたが、今まで勤めていた高校と大差はない。 「明日、挨拶に行かないとな」 さっきまで、もう教師を辞めようかと思っていた。 今の時代に、自分のような熱血教師などお呼びではない。 正義感は返って仇になる。 ただ、まだ教師になって1年だ。 2年目はまるまる休職していたから、ここで辞めるのは意気地がなさ過ぎる気がした。 辞めて、どんな仕事に就いても、自信を失ったままなら上手くいかない気もする。 「だけど。奮い立つ気力がないな……こうやって、なあなあ主義の教師が増えていくのかなぁ」 姥桜学園の資料が、バラバラと散らばっている。 山崎は、ダルそうに資料をかき寄せるとファイルにしまい、そのまま小さなデスクの引き出しに放りこんだ。 「とりあえず、様子見でいくか。どうせ、どこの学校も同じだろうし」 新天地を与えられても、場所が変わるだけ。 山崎は、自信もやる気も失くした抜け殻教師になっていた。
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