25人が本棚に入れています
本棚に追加
拓海は高校の部活でバスケットボール部に所属していた。遥香はバスケットボール部のマネージャーをしていた。
ふわふわとした癖毛に色素の薄い髪色は体育館に差し込む光で、更に薄茶色に見える。クリっとしたアーモンドの形をした瞳にはっきりとした二重は愛らしい。
それなのに試合にもなると、愛らしさは、一変にして風を切ってコート内を駆け回る。汗さえも輝き眩い拓海に遥香は想いを寄せていた。
「はい、タオル」
ベンチに戻ってきた拓海にタオルを渡す。
「ありがとう」
こぼれるような笑顔を遥香に向ける。タオルを受け取り遥香の頭をポンポンとする。いつもイタズラ半分にからかう拓海に、嬉しいのに「やめて」と一瞥するけど、遥香は自分に向けられる笑顔に困ってしまう。
拓海はバスケットボール部で人気もあって皆に優しい。イケメンだし、頭も良いし、拓海の事を好きだって言う女子がたくさんいる。
そんな拓海が遥香にいつも絡んでいくから、周りでは2人は付き合っているんじゃないか、と噂になっている。でも本当は付き合ってない。
遥香は拓海と一緒の場所にいて見ているだけでいい、と自分の気持ちを拓海に打ち明ける事はなかった。
そんなある日、拓海が部室に現れた。部室では部活の練習が始める準備をしようとしていた遥香がいた。
いつもなら何人かいる部室に2人きり。
「遥香…」
急に声をかけられ驚いた遥香は振り向いた。
振り向いた先には拓海がふわりと笑う。ダメダメ、この笑顔に殺られてしまう。
遥香はドキドキする胸を抑えて、
「何?」
素っ気ない態度をとる。
「えー…。なんか塩対応だな?」
揶揄うように口角を上げて笑う。
その男を感じる笑みに耐えられず遥香は
「部室に2人きりでいたら、付き合ってるって噂される…」
部室から出ようと拓海の横を通ろうとすると腕を引き寄せられた。
「じゃあ、付き合おう」
遥香の瞳を射抜く真剣な眼差しに拓海の低い声が優しく囁く。
遥香は突然の付き合おう、に顔が熱くなる。
「じゃあ…って何よ…ついでみたいで、なんかやだ…」
呼吸が急に苦しくなる。瞳まで熱くなり涙が溢れそうになる。
泣きそうに眉を八の字に寄せる遥香の顔をみた拓海は慌てふためく。
「ずっと…ずっと好きだった。ずっと一緒いたいと思ってた。だから付き合って…」
最初のコメントを投稿しよう!