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歩道橋を渡った先の時間貸し駐車場で車に乗り込む。ガブリエルはやっぱりドアを開けてくれて、シートベルトを掛けてくれた。普通じゃないと思っても、嬉しいと思う気持ちは隠せない。
『今夜の予定は?』
「……大丈夫。メールだけ入れとく」
宗助に「帰ります。心配しないで」とだけメールを入れた。落ち着いてみるとあの後、女性とどういう話になったのか知りたいと思う気持ちがある。
案の定、着信の嵐が始まって、ガブリエルの前で電話に出るという選択肢は私にはなかった。ガブリエルからどんな話があるにしても、打算で宗助と結婚するようなことは絶対に選ばないし、宗助に期待を持たせたりするのはいけないと自分に言い聞かせる。
何の話なのかとは聞く勇気がない。車内に流れる音楽を聴きながら、時折目を合わせて微笑むだけ。ただそれだけなのに心地いい。
高速に乗って二時間。夕焼けが過ぎて宵闇が降りてきた頃、ガブリエルが車を停めた。
「ここは?」
『公園だそうだ』
そう言われても、周囲は木ばかりで店も家も何もない。数台しか止まっていない駐車場から、手を繋いで歩いていく。
「あ……綺麗……」
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