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最終話 届かない月を掴む
星空の下でのキスの後、私たちはガブリエルの部屋に戻って初めての夜を迎えた。
朝の光を感じて目を開くと、ガブリエルが微笑んでいた。今日は、昨夜起きたことを覚えている。恥ずかしくて、掛け布団で顔を隠そうとする手を取られ、キスを交わす。
『おはよう。くらら』
「お、おはよう。ガブリエル」
優しい声が耳から全身へと染込んでいくような不思議な感覚。くすぐったさに笑みが零れる。
『体調に異常はないか?』
「……ちょっと……痛い……かな」
異常はないと言おうとしたのに、正直に答えてしまった。
『そ、それは……』
「だ、だ、大丈夫。仕方ないから」
二人で顔を赤くして見つめ合い、どちらからともなく、噴き出すようにして笑い合う。
『治癒魔法が使えないのが残念だ』
「そうなの?」
『ああ、魔法にも向き不向きがある。くらら、待っていてくれないか』
起き上がったガブリエルは紺色のパジャマのズボンを穿いていた。私はいつの間にか上着を着ていて、掛布団の中からその逞しい背中を見送る。
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