最終話 届かない月を掴む

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 そう言って、ガブリエルも同じように紅茶を淹れて飲む。ベッドの端に腰かけたガブリエルと二人で顔を赤くしながら紅茶を飲んで笑顔を交わす。  これは幸せな朝。そうとしか思えない。 「……もしかして、紅茶の淹れ方を小次郎さんに習ったの?」  メイクアップアーティストのコジローは動画の登場時に、紅茶を飲む姿がトレードマーク。 『ああ。剣術より厳しい特訓を受けた』  頬を赤くしたままのガブリエルが可愛くて内心悶える。 「も、もしかして……パジャマの上下を分けて着るっていうのも?」  ずっと疑問に思っていたものの、嬉しくて聞くことができなかったことを口にする。 『これは紋三郎が大事な女性と同じ寝台で眠る時の、この世界の常識だと……まさか違うのか?』 「う、ううん。じょ、常識なんだけど、どうして知ってるのかなって思ったの」  咄嗟に嘘を吐いてしまっても、ガブリエルは疑問にも思わなかったらしくて笑顔を見せたのでほっとする。 『思い返せば一緒に眠る直前から、くららが好きになっていた』
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