最終話 届かない月を掴む

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 追撃としか思えない告白に、胸が射抜かれたような気がした。もうこれ以上は幸せに耐えられないかもしれないと涙が溢れた。 『く、くららっ?』  ぽろぽろと零れる涙を見て、ガブリエルが慌てて私を抱きしめる。 「う、嬉しくて……幸せなの」 『私も幸せだ』  笑いながら泣き続ける私と、笑いながらキスを繰り返すガブリエル。二人の初めての朝は、幸せ以外の何物でもなかった。       ◆  ガブリエルとの新しい日々が始まって、将来の話も少しずつ進んでいく。スケジュールを見ながら私の両親への挨拶、結納や結婚式の日取りと具体的な形が見えてきた。  宗助は私に会わせる顔が無いと言って、以前から打診されていた米国の本社に赴任することを決めたらしい。元恋人の妊娠は狂言で、上司との別れ話がきっかけで自暴自棄になって宗助の部屋に乗り込んだと清流から聞いた。  未だ使う事の無い演奏用の部屋を覗くとパールホワイトの竪琴があの日のままの状態で放置されていた。 「ガブリエル、竪琴、弾いてみてもいい?」 『ああ、構わないが……いいのか?』 「私にもよくわからないんだけど、すっきりしないの」
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