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書き物机の上に揃えられた白い紙は、異世界の楽譜が書かれている。
「この曲は何?」
『「届かない月を掴む」……クラーラと最後に合奏した曲だ』
「えっと……前世の私と一緒に合奏しようって約束したのよね?」
『……ああ』
「それが気になってるのかも。よし、前世の私を供養する!」
その日から私はガブリエルと一緒に竪琴を練習した。竪琴を手にすると、私の手は勝手に動き出す。練習を重ねると、自分の手とは思えない滑らかな動きができるようになった。
『届かない月を掴む』は一時間半に及ぶ長い曲。天才を超える天才で無ければ弾けないと言われていた難曲だったらしい。
「でも、ガブリエルも前世の私も弾いてたんでしょ?」
『二人で必死になって練習したから弾けただけだ。お互いが目標だった』
ヴァイオリンを抱えたガブリエルが笑う。奇妙な懐かしさは、もう心を焼かない。ただ懐かしいと感じるだけ。
二カ月が過ぎ、冬が始まる直前になって、星降る草原が広がる公園で演奏する許可を取った。元々人の少ない地域で周囲に民家も何もなく、これまで誰も使用許可を申請したことの無い場所だった。
『くらら、寒くないか?』
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