海に還れば

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1.月なき夜(よ)の凪いだ海に 身体と心一つにしたくて 私は裸で 海へ駆け出す 消えかけたランプ 砂浜に置いてゆき ひんやりとした蒼い海に 私をゆっくり沈めれば 光なき黒蒼(こくそう)に 包まれて洗われる 常世(とこよ)で汚れきった 私清められて あるべきものへ 生まれ変わるわ 生まれたままのものとなり 私が蒼に溶けていく 一つになるたび 知覚広がり目覚める 新たな私が望んでることを この蒼で得るべき姿を 2.人が背負う理(ことわり)抜け この海泳ぐ一人の白鯨(はくげい) 私は自由に 海と語らう 蒼の中巡る 魂といつの日も しんしんと降る海の雪が 私の身体に積もるたび 幾千の刻流れ 星の主(ぬし)変わってく 主(あるじ)に落とされた 命掬い上げて 海へ還すは 私の役目 白鯨(はくげい)担うこの海で 魂拾い救うこと 命が落ちゆく 黒蒼(こくそう)照らす白灯(はくとう) 今の私は命のしるべで 魂を癒す母なの
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