遁走

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遁走

 期待されることが、役目を押し付けられることが、私にとってはひどく重荷だった。  笑って、笑って、ごまかそうとしていたけれど、その重責は容赦なく私にのしかかり、 ──ぷつり、と糸が切れた。  ただここに“私“でない、自分自身の居場所はないのだと、気づかされた。  “私”はなんなんだろう。  期待に応えられない、役目をこなせない、“私”になれない“私”は、  一体、何の価値があるというのだろう。
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