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「むか~し、むか~し、キンゴレ山のふもとに一匹のセンザンコウ族のオトコが住んでいたそうな・・・そのオトコのしごとは、山に生えているクチクチヘルヘキノコを採りにいくことだったと・・・」
ラットンが昔話を半分ほど終えたときに彼の寝間着の右袖が引っ張られた。
「終わったにゃあ」
ミアアがトイレのドアを開け出てくると、今度はラットン自身も『ブルッ』と身震いし、
「あー、僕もオシッコするよ」
そして、彼がトイレに入りドアを閉めようとすると、ミアアがそれを遮った。
「だめ、開けといて・・・怖いから・・・後ろ向いてるから・・・話の続きをして・・・」
そう言ったミアアは耳をふさごうとはしなかった───耳をふさぐと怖いからだろう。
「わかった、わかった」
ラットンはわずかに緊張気味に、立ったままオシッコをした。
『じょぼじょぼ・・・フゥ~~・・・センザンコウのオトコはついにサンゴの宝を見つけ、喜びいさんでふもとまで駆けて下りてきたが、途中で転んでサンゴを折ってしまったそうな・・・オトコはワンワン泣いて、その涙が小川となって今も残っているとのことじゃと・・・あー、オシマイ』
「ふ~~ん・・・あーーー、眠い・・・にゃあ!」
ミアアは伸びをしたが───その動作が『ビクッ』と止まった。
「ねぇ!・・・ラットン君!・・・こんな真夜中になんか下の階で話し声がするよ?」
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