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「ゴメン!ゴメン!だって、ラットンくんカワイイんだモン!エヘッ!」
ミアアは本当に屈託がないのだ。
「かんべんしてくれよ~。僕の首が持たないよー!」
愚痴るラットンは自分の首ねっこをさする。
そのとき───春のうららかな風に乗って野太く響く声が遠くから聞こえてきたのだね。
「たぁーーおれーるぞぉーー」
「あ!木こりのアックズさんの声だ・・・そんなに遠くないよね?」
ミアアは頭のネコみみをそばだてる。
「あー、だね」うなづくラットン。
「どれどれ?」
ミアアが小川が流れ込む家の隙間から外を眺めると───遠くにある森の端、高ーくて、古ーいビルの足元から煙が立ち上り、やがて大きな煙幕となって垂直に崩れるビルを飲み込んでいった。
「今日も大きなビルを倒してるーー。すっごーい!」
思わず感心するミアア。
「あー、確かに」ミアアの横でラットンもうなづく。
そのとき、そのとき・・・誰かが家の扉をノックした。
『トン・タン・テン』
「あれ?お客さんかニャ~?」
ミアアが『トテッ・トテッ』と扉に向かって跳ねていった。
ミアアは急ぐと四つ足で走ってしまうのだ。
「もし、もーし、どなた様なのだニャ?」
「あー、わたくしメランゲ・パーニ家のグラージェナと申しますの・・・こちらが『よろず捜索本舗』でよろしいでしょうか? コホン!」
外から、品の良いおばさんという声が伝わってきた。
「はい、はーい!そうですよー!今開けますねー」
久しぶりのお客にミアアをウキウキを抑えつつ扉を開いた。
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